1980年代、ファッション写真を多く撮った。そのほとんどはすっかり忘れてしまったけれど、 この特集はとても印象ぶかく思い出す。雑誌はMODE ET MODE.。 何が印象的かと言うと、ロケ地が北欧フィンランドだったからだ。それも白夜の季節6月。 夜中12時がすぎても暗くならない。そのため朝6時に起きて、メークのあと移動とかしながらの、 夜11時ぐらいまでの撮影。3日間で30頁分を撮り捲った。 モデルは現地でオーディションした。ヘアメイクは今では、写真も撮る塗師。 スタイリスト編集は、今ファッション評論家になっている永井さんだった。 3日で30ページはたいしたことがないと思うが、グラビアpageの撮影と違ってファッションの場合、 ヘアとメイクに毎カットかなり時間もかかる。 しかも航空会社のとのタイアップもあるので首都ヘルシンキだけではなく、国を縦断するように車の移動がある。 それはそれは超過酷なロケだった。 なによりも陽がくれないので、美しい夕日が永遠と続き、撮影の終了が言えないのだ。 下に紹介した写真の2段目の青空のカットは、もう午後10時をすっかり回っているのだ。 緯度の低い国に住む人間にとって、太陽が沈むスピードは、撮影に緊迫感をあたえるが、 北欧白夜の夕方?は、永遠と続く。美しい斜光がたっぷりと味わえるので、写真家にとっては楽園のようなものだ。 でも、体は消耗する。そんな強行軍の撮影も、白夜の季節だったから可能だった。 ファッション写真は時間がたつと古臭くなってしまう。服やメイクが撮影した時代に止まっているからだろう。 モデルのポーズなども時代性があるかもしれない。 ぼくは、モデルのポーズなんてどうでもいい、モデルにお好きなようにと思っているけど、なかなかそうはいかない。 服を見せるためのわざとらしいポーズより、必然的な自然な動きが本当は好きだ。 例えば一番上の写真などは、実際にこういう場所で女性が佇むシチュエーションはありえると思う。 寄り掛かりながら誰かを待っているとか。撮影のときはいろいろなポーズをしたはずだ。 もっと自然な写真も撮っている。でも、洋服の見え方が、デザイナーの望むシルエットがでているのが、 このポーズだったのだろう。そこがファッション写真の難しいところだ。 いや、シルエットがわかりながら、自然に撮れることがカメラマンの腕なのかもしれない。まだまだ未熟だったわけだ。 その他の4枚は歩いている感じなので、自然で好きだ。 でも赤いジャケットの左手がわざとらしいな。 たぶん女性が町とか、こうやって歩いている時、手ぶらなのが不自然なのかもしれない。 いかにも写真を撮ってますって。もし手ぶらだったら、ホントはドラマがなければいけないかも知れない。 たとえば、パーティに行く時、ボーイフレンドと喧嘩して、何も持たず車から飛び出してきたとか。 そんな、1枚の写真から想像力がわくような写真がぼくは好きだ。 そういうのって、ピーターリンドバーグというファッション写真家は天才的にうまい。 いやいっけん、わざとらしく見える、ニュートンの写真も想像力をかき立てる。
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