1984年、友人でもあった博報堂のARTDIRECTOR S氏が、クルマの広告をやらないかといってきた。

当時僕は、人物専門のカメラマンで、小さな物さえも撮ったことがなかった。

自分はそういうものはむいてないと思っていた。ただクルマについては、

もともと好きだったし撮りたいと思っていたが、

クルマを撮るためのテクニックはほとんど持っていなかった。

ただ、風景のなかの車だったら撮れると思っていた。

そんなおり、MAZDAの新型車ETUDEが発売されることになり、

モノクロームでしかもレタッチを加えるということでもあり、やってみることにした。

撮影場所はカリフォルニア。ロケハンに約10日、本番の撮影も一週間といった、

贅沢な撮影だった。なによりも、ロスからメキシコ国境までと、

サンフランシスコまでとロケハンしたのが一番楽しかった。ロケハンにかこつけて、

立ち入り禁止の石油採掘所の奥まで入っていき、

普通じゃはいれないところまで見ることができた。

ロケハン中は朝から晩まで走り回り、宿泊するところが見つからなく、

ようやくたどり着いたら、一泊15ドルの安モーテルだったなんてこともあった。

サンフランシスコでもどのホテルも満室で、スイートに無理矢理6人でザコネしたこともあった。

車の広告としては、当時斬新で、話題になったが、etudeという車はさっぱり売れなかった。

この広告のあと、僕はMAZDAの車の広告を多く手掛けることになる。


ARTDIRECTOR /JUNGO SHUDEN  HAKUHODO
HASSELBLAD 500CM 80mmF2.8 Tri-x